2022/02/07 16:17
高校生になった夏休み。
ボクは同級生とペアを組み、母校の小学校でプールの監視をした。
午前中を小学生、午後を中学生にと区分して、プールを開放していた学校だった。
ところが、中学生は一人も泳ぎに来ない。
お陰で午後の部は、苦しいくらい暇。
かくして、監視用の長椅子はベッドと化し、午後は昼寝がアルバイトとなった。
そんなある日の午後の部、
寝ぼけていたボクの頭の中に一つのヒラメキ!
「ごめん、俺ちょっと家に帰ってくる!」と相棒に告げるやいなや、
急いで家へ帰り、また急いでプールに帰ってきた!
何をしに帰ったって?
キャハハ、飼っていた亀を連れてきたんだ。
全長5cmほどの亀。名前は「のそ」。
早速ボクは、「のそ」をプールの端から「ポチャン」と放し、
急いで反対側の端へ走って行き「ドボン!」と飛び込んだ。
「おーい、のそ~今助けに行くぞ!」???
もはや、そのプールは太平洋。
ボクは一刻も早く「のそ」を助けようと、
目を左右にキョロキョロ動かしながら、海へ潜っていく!
とっ、その時だった!
「ゆうじさ~ん、ここです!」
それは、
聞こえなかったけど、確かに聴こえた「のそ」の声。
目をパッチリ開けて、ボクの方へ向って必死で泳いでくる!
「のそ~ここだ~俺だ~!もう大丈夫だぞ!」
いやぁ~「のそ」の泳ぎは見事なものだった!
正直、亀って、こんなに泳げるんだって驚いた。
だって、小っちゃい四角い金魚鉢で飼っていたのだもの。
同じ水の中で、やっと「のそ」の気持ちに近づけた気がしたよ。
この時「のそ」は、初めて「亀」になれたんだね。